意見
【伝えよう】卒業式答辞
暖かな風がそっと頬をなで、春の香りが漂う季節となりました。
本日、私たち十八名は鹿北中学校を卒業します。
卒業式の開催さえ、危ぶまれるこの状況の中で、私たちのために、このような素晴らしい式を挙行していただきありがとうございます。また、郡校長先生、上田教育委員様、PTA会長北原様、在校生代表黒田美海さんから頂いた温かいお祝いの言葉が深く胸に刻まれ、改めて卒業を実感しています。
思いおこせば、三年前、初めて鹿北中学校の清流門をくぐり、この体育館で入学を祝っていただきました。その日から今日までの三年間、本当に様々なことがあり、そのたびに私たちは一つ一つ成長してきました。
入学式で「新入生代表の言葉」を読んだとき、緊張で手足が震え、中学校生活を不安に思う気持ちがありましたが、先輩から「歓迎の言葉」をもらい、困ったときは先輩や先生に頼りながら頑張ろうと思いました。
中学校の第一歩を踏み出した私たちでしたが、いきなり壁にぶつかりました。部活動では、先輩・後輩の役割を知り、一つしか学年が変わらないのに、先輩方の姿をとても大きく感じました。また、指示を待つのではなく自分から率先して動くことの難しさを感じました。授業では、学習内容が増え、授業の内容を理解することで精一杯だったことを覚えています。中学校に入学して、初めてのことばかりで、これまでやってきたことが通用せず、悩むことが多くなりました。
二年生になり、「先輩」という立場になりました。部活動、行事、日常生活、様々な場面で「教わる」から「教える」立場になりました。後輩に教えることの難しさ、次は私たちがリーダーであるという不安の中、十二月に生徒会役員の委嘱式がありました。先輩から頂いた言葉はこれまでのどんな言葉よりも重圧となり、鹿北中学校の中心となり、学校全体をリードすることへの大きなプレッシャーを感じました。そして、三年生。三年生での最初の思い出は生徒会で何度も話し合って作り上げた「Believe」という年間テーマです。「どんなに高い壁でも互いを信頼し、心を一つにして乗り越えたい」「本音を言い合える本気の仲間づくりをしたい」という思いをBelieveという言葉に込めました。
そして、生徒会長として最初に任された仕事は「山のいぶき」の指揮でした。「自分がこれまでの先輩のようにできるのだろうか」という不安と準備不足のせいで、初めての全体練習では友だちや先生に迷惑をかけてしまいました。しかし、友だちや家族が声をかけてくれて、最後は、先生からの「自分から逃げるな」という言葉のおかげで、気持ちを切り替え、できないことがあっても前向きに考えることができるようになりました。練習を重ねるごとに、徐々に「自分らしい指揮」ができるようになり、みんなの前でも自信をもって指示をだせるようになりました。去年の卒業式が終わった後は、達成感というよりも、正直「ほっ」とした気持ちの方が大きかったのを覚えています。その卒業式で、前生徒会長の西牟田光虹さんが「リーダーシップをとることに完成形はない」という言葉を残されました。今、自分も卒業するという身になってみると、それを強く感じます。自分では完璧と思っていても周りからは「まだいけるよ。」と常にいいものを求められます。それは指揮だけではありません。どんな場面でも現状に満足するのではなく、常に高いレベルを目指してきました。その過程で何度も壁にぶつかりましたが、強い信頼関係を築くことで仲間とともに乗り越えることができました。
5月。今年が第一回となる小中合同での運動会。小学生までまとめるのは難しかったけど、小学校のかほく委員と協力し、練習を重ねました。そして迎えた本番。「一致団結」のテーマのもと、小中学校それぞれにサブテーマを作り、赤・白の団長が中心となって鹿北らしい運動会をつくりあげることができました。
小中学生、家族、地域の方が大きな輪をつくって踊った鹿北音頭。地域の方が自分のことをわが子のように応援してくださったこと。運動会を通じて、小中学校、そして地域との一体感を感じることができました。
三年間の部活動の集大成である「中体連大会」。それぞれの部活動がそれぞれの目標に向かって、気の遠くなるほどの練習を積み重ねました。僕が部活動を通して学んだことは「礼儀・感謝・日常生活」の大切さです。たくさんの汗を流した鹿北グラウンドでは地域の方がたくさん励ましの言葉をかけてくださいました。山鹿市中体連大会の時にも家族や友だちだけでなく、地域の方々が応援に来てくださり、「礼儀正しさと一生懸命さがいいね。」との言葉をいただきました。何かに一生懸命に取り組む姿は、人に感動を与えることを知り、三年間の頑張りが報われた気がしました。きつい時、つらい時、キャプテンとして自信を無くしかけたとき、声をかけてくれた仲間。仲間のおかげできつい練習も乗り越えることができました。ありがとう。
記念すべき第四十回かほく祭りではサポーター会議を何度も重ね、企画段階からまつりに参加しました。鹿北市民センターの方々が、僕たちの意見を受け止め、尊重してくださったことがとても嬉しかったです。オープニングの司会は緊張しましたが、空に上がった四百個の風船とそれを見上げる会場の人達の笑顔を見て、達成感を感じました。私はかほく祭りで自分も鹿北町の一員なんだという誇りを改めて感じました。風船飛ばし、神輿、人文字等、貴重な経験をたくさんさせていただき、市民センターの方々、北勢会の方々、先生方に感謝の気持ちでいっぱいです。卒業してからも、地域を支える一人として鹿北町のさらなる発展のために頑張っていきます。
在校生代表として、送辞を読んでくれた美海さん。そして、今日どうしても参加できなかった後輩の皆さん。これから鹿北中を背負っていくのはあなたたちです。私はこの一年間で、指導する先生、先輩の気持ちがよくわかりました。時には壁にぶつかり、逃げ出したくなることもあるでしょう。しかし、そんな時こそ、周りにいる仲間を信じて壁を乗り越えてください。常に私たちをサポートしてくれた二年生。その二年生を見て必死についてきてくれた一年生。私たちは憧れの先輩、そして大きな壁となれたでしょうか。私たちは、先輩として後輩のことを誇りに思います。これからは、一、二年生が主役です。自分を信じて、仲間を信じて、新しい鹿北中学校を創ってほしいという私たちのメッセージを伝えてください。
先生方、三年間大変お世話になりました。元気がないときには笑わせてくださり、きついときには励ましてくださり、失敗したときは厳しくも温かい言葉をかけてくださいました。おかげで、こうして十八名全員で卒業式を迎えることができました。鹿北中学校は生徒数が少ない学校です。しかし、先生方が生徒一人一人を大切にしてくださる温かい学校だと思います。これからは、先生方のご指導を胸に、自分の夢に向かって清流の人としての誇りをもってで前進していきます。
お父さん、お母さん。毎日、仕事で疲れている中で、僕の話を聞いてくれてありがとう。時には反抗して、ものに当たってしまうこともあったね。ごめんなさい。でも、そんな私たちを見守り、愛情をこめて育ててくれました。普段は恥ずかしくて言えないけど、自分がしたいこと、進みたい道に進ませてくれて、本当にありがとう。もう少し迷惑をかけるかもしれないけど、高校生として自分の一歩を踏み出したいと思います。お父さん、お母さん。二人は僕の目標です。二人を超えることはできないかもしれないけど、自分なりに頑張ります。これからもよろしくお願いします。
そして、三年生のみんな。小学校から七年間一緒で、いつもみんながいるのが当たり前でした。鹿北中学校に入学するまでに七人転校して十八人という少人数になってしまったけど、少ないからこそ、毎日が楽しくて笑顔が絶えないクラスでした。三学期に入ってからは、入試のことで頭がいっぱいになっていたけど、一日一日と時間が過ぎるたびに、そしてこうやって卒業式を迎えてみて、ようやくみんなとお別れをしなければならないという実感がわいてきました。別れるのはつらいです。悲しいです。僕は、この答辞を書きながら涙が溢れてきました。僕は、この学年が大好きです。だからみんなと笑いあった、泣いた、楽しかった日々を絶対に忘れません。
四月から私たちは、それぞれの道を歩んでいきます。これから、どんなに大きな壁と出会っても、私たちならきっと乗り越えられます。つらいときは、信じあった十八人の仲間を思い出し、壁を乗り越えられるまで何度でもチャレンジし続けます。
「出会いもあれば別れもある。」という言葉のように、別れがあれば、次は出会いが待っています。これまで出会い、支えてくださったすべての方々に心から感謝し、次のステージでの新たな出会いを楽しみにしています。
名残は尽きませんが、これから私たちは新たな世界の入り口に立ち、自分の描く未来へと飛び立つことを約束します。三年間本当にありがとうございました。
令和二年 三月十四日
卒業生代表 鬼塚勇