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【視察研修】千代田区立麹町中学校視察研修

 2月18日(水)、千代田区立麹町中学校を視察訪問し、これからの教育のあり方について学ばせていただきました。今日の視察には、全国の学校の先生方、議員の方々、教育委員会の方々、報道関係の方々など様々な人が多数参加されていました。

 午後1時より、授業を自由に参観することができ、全学年、様々な授業を参観しました。1年生の数学の授業は、4階のカフェテリアで行われていて、生徒は全員「Qubena」を使って自分で学習に取り組んでいました。


    Qubenaとは、人工知能が生徒一人一人の得意・不得意を分析し、解くべき問題へと誘導してくれるAI型タブレット教材です。

 授業を参観していると、男子生徒が近づいてきて、Qubenaを使っての学習や単元テスト、家庭学習について丁寧に説明してくれました。そのプレゼン力があまりに見事で驚かされました。

 生徒は、けっして行儀がよいというわけではありませんが、思い思いに自分のペースで学習に取り組んでいます。

 午後2時より、講堂のようなところで、校長先生が約1時間45分、「学校教育の本質から問い直すーそもそも目的って何?―」とのタイトルで麹町中学校の教育実践について説明してくださいました。

 様々な実践を通して、「世の中は素敵、大人も素敵」と思える子が育つ教育に取り組んでいること、さらに、手段が目的となっている教育の矛盾に切り込み、次々と改革を進めている麹町中学校の姿が浮かび上がってきました。

    例えば、「日本では、宿題を出すことが目的化されている。」と校長先生は問題提起されています。麹町中では、「わからないところだけをやっておいで。わからないところがいっぱいあったら一つでもいいんだよ。だけど、その一つをやるのが大変なんだ。だって自分ではわからないから。だったらどうしたらいい?」などの問いかけから、自ら調べたり積極的に質問することができる生徒を育てています。宿題とは何のためにあるのかを生徒も、先生も徹底して追求していく、そんな取組が日々行われています。

    また、生徒と先生が「自律や尊重を妨げているものは何か?」について話し合う時間を作っています。その話し合いを通して、生徒が自律を妨げているものとして取り上げたものがありました。それは何かというと「避難訓練」です。地震は予告なしにやってきます。しかし、避難訓練は予告されてから実施されます。だから本当の意味での訓練になっていないという生徒の意見。そして、ぜひ、予告なしの避難訓練をしてくださいとの提案があったそうです。

 また、もう一つ出てきた意見として「授業」があります。「ずっと受け身の授業では苦痛です。自分たちでできることは自分たちでやらせてください。」との提案もあったとのことです。

 確かに、カフェテリアで行われた1年数学の授業では、いろいろなところで「生徒自身による学び」が見られました。

 他にも、担任制を廃止したり、定期テストをやめて単元テストや実力テストを実施するなどの改革に取り組んでいます。目的化している手段を次々と転換しながら、子どもたちを学校創りの「当事者」に育てていき、生徒一人一人が「自分の学校」と言える学校を自ら創っていく。そんなエネルギーが感じられました。

    質疑応答の中では、なるほどと思う言葉が次々と出てきました。

 何も起こさせないのではなく、子どもは何かを起こしたり、対立するというのが大前提。子どもたちが起こしたことや対立することを学びに変えていくのが学校であり教育。そのために、子どもが学びたくなるような「しかけ」を考えています。

 発達障害の子を排除するのではなく、その子がなぜそういう行動をとるのかを理解し、支援できる子を育てていく。そして、みんなが教室で学べる環境を整えていく。なぜなら、未来の社会の姿が学校だからです。

 トライアンドエラーが認められる学校でなければ、チャレンジする生徒も先生も出てきません。

 あるとき生徒会のリーダーが、「先生、何度言っても協力してくれないです。」と言ってきました。そんなとき、先生たちは、フォロワーである協力してくれない生徒に、「どうして協力しないんだ」と指導します。フォロワーへ指導する場面はよく見かけます。しかし、リーダーへの指導はあまり行われていません。人は簡単には動かないし、なかなか言葉が通じない、このことは元々当たり前のことです。この動かない生徒たちの心を動かすにはどうしたらよいのか、人を動かす言葉をどれだけ持っているのか、このことをリーダーに考えさえる機会が大切なのです。そこにリーダー育成のチャンスがあるはずです。

 そして、何度も言われたのが、「誰もが納得する最上位の目標を徹底した話し合いの中から決めていく。」、この目標を達成することからすべての教育活動を考えていけば、実践の優先順位は見えてきます。見えてきた最上位の実践は、決して靴下は白といった校則を守らせることにエネルギーを使うことではないはず。

 「みんな仲良くしよう」、大人もなかなかできないことを子どもに求めていませんか。子どものことを本気で考えた時、本当の言葉が出てくるものです。その言葉は、子どもだけでなく教師自身も変えていきます。だから、教育はすばらしいのです。

 質疑の時間は延々と続き、午後6時30分を過ぎても続いています。校長先生が、「もうそろそろ終わりましょうか。」と言われなければ、まだ続いていたことと思います。それほど、教育のあり方で試行錯誤されている方々が全国におられて、課題解決のヒントを持ち帰ろうとしているのだと、会場の雰囲気から感じました。

 今日の視察研修では、たくさんの刺激とこれからの教育について考えるきっかけをいただきました。

 麹町中学校の生徒のみなさん、校長先生をはじめ諸先生方、有意義な時間を創っていただき、ありがとうございました。