校長室だより
タスキをつなぐ
駅伝の魅力は、団体戦であること。各区間を一人で走り切るという自分との戦いである一方、タスキをつなぎチームで勝利を目指します。
牛深中駅伝競走部20名は、残暑厳しい中で、早朝、放課後と地道な練習を継続してきました。休日に久玉や、クリーンセンターの坂道を懸命に走る姿を何回も見かけました。「走った距離は嘘をつかない」という姿勢は、10月16日天草郡市中学校駅伝競走大会当日の大きな成果として現れました。まさに、男子、女子ともに、見ている者を感動させる走りでした。
首藤様をはじめ保護者、地域の皆様、ご協力誠にありがとうございます。11月の県大会に向けて、今後ともどうぞよろしくお願いします。
合唱は、常を映す鏡
10月20日(日)に学習発表会・合唱コンクールを開催しました。写真は見事「金賞・最優秀賞」に輝いた3年2組です。11月19日の郡市音楽会に学校代表として出場します。「最優秀指揮者賞」に3年生 宮内くん、「最優秀伴奏者賞」には2年生 濱石くんが選ばれました。おめでとうございます。
この一ヶ月、音楽の授業はもちろん、朝や昼休み、放課後と、校舎全体から湧き出るような美しい歌声。心を揺り動かすピアノ伴奏。気持ちや表現を引き出そうとする指揮者のかけ声。日に日に上達する合唱に耳を澄ます極上の時間を過ごしました。本番当日は、まさに「感動」。懸命な姿に涙が出ました。
合唱は、日常生活そのものが如実に反映される「常を映す鏡」と言われます。求められるものは、音楽的な技術の高さではなく、仲間を信じ支える強さ、仲間を愛する心の深さ。合唱は一人ではできない。仲間がいるからこそ成立する。口を開けて体全体で表現する生徒たちの姿から、大事なことを学びました。
また、1年生「ふるさと天草(牛深)学習」、2年生「職場体験で学んだこと」、3年生「牛深ハイヤ」の発表も見事でした。課題追究を図る姿勢がうかがえました。事業所の皆様、ハイヤ保存会の皆様、ご協力誠にありがとうございます。
忘れもの
「忘れもの」 高田敏子
入道雲にのって
夏休みは いってしまった
「サヨナラ」のかわりに
素晴らしい夕立をふりまいて
けさ 空はまっさお
木々の葉の一枚一枚が
あたらしい光と
あいさつをかわしている
だがキミ! 夏休みよ
もう一度
もどってこないかな
忘れものをとりにさ
迷子のセミ
さびしそうな麦わら帽子
それから ぼくの耳に
くっついて離れない 波の音
以前、小学校国語の教科書に載っていた詩です。
まだまだ世の中は茹だるような残暑の最中ですが、この詩を読むと、遠い少年時代に感じた夏の終わりの物悲しさと黄昏の涼風を思い出します。
机の端には手つかずの夏休みの友と絵日記帳。「毎日、絵日記にするようなイベントがあるわけないだろ」と、ため息と涙の混じった独り言をつぶやいた8月31日。ハンコがズラッと並んだラジオ体操カード。名前が薄く残った白いプラスチックのプールカード。すっかり色褪せた野球帽。アイスキャンデーの30円当たりバー。箱に少し残っている2B弾と、金具が錆びた水中メガネ。靴底の砂と3回目の皮がはげた日焼けの痕‥‥。夏休み中は「サザエさんは愉快だな~♪」の曲にも、寂しい気持ちにはなりませんでした。
詩では、夏休みという親友に、少年は忘れものを取りに戻ってこいよと呼びかけます。「夏よ、カムバック」という気持ちと、「こんなに思い出を置いて行かれたら先に進めなくなっちゃう」という相矛盾する気持ちがあるのでしょう。
中学校学習指導要領では、「国語科は、様々な事物、経験、思い、考え等をどのように言葉で理解し、どのように言葉で表現するか、という言葉を通じた理解や表現及びそこで用いられる言葉そのものを学習対象としている」とあります。目標には「思考力や想像力を伸ばし~」と「想像力」が加わっています。
「想像力を伸ばす」とは、「実際には見たり体験したりしていない事柄などを頭の中に思い描く段階から更に進んで、様々な資料を基に、これから起こるであろうことやどのように行動すればよいのかということを思い描くなど、将来の状況やあるべき姿を予測したり、見通しをもって行動したりすることの能力までも身に付けること」であるとされます。
言葉を聴き、読み、言葉を発する人の思いを推し量ること。同時に、等身大の経験を重ねて、自分なりの素直な感情と紐づけて記憶に残すこと。それらが相互理解や未来に向けての見通しといった「想像力」の基盤となります。
夏休みという親友と過ごした44日間。生徒達は、その親友とどんなことを「忘れもの」とすることができたのか、どんな想像力を養うことができたのか、そのうち聞いてみたいと思います。ご家庭でも話題にしてください。
さぁ、2学期!
台風による臨時休校で9月2日(月)にずれ込んだ始業式でしたが、44日間の夏休み期間(臨時休校で4日プラス)大きな事故もなく、日焼けしてちょっと逞しくなった生徒達と一緒に、無事に2学期のスタートをきることができました。
始業式の校長講話では、
〇受験に向けていよいよ本格始動の3年生には、思いつきの瞬発的な努力ではなく、コツコツとした息の長~い少しずつの努力の継続こそが大切であること。
〇次期リーダーとして成長が期待される2年生には、自分を振り返るとともに、先輩が目指してきた生徒像を確認し、牛中の「顔」としての自覚を持つこと。「きちィ」「だりィ」はダメ。自転車二人乗りなど違法行為は地域が見ている。
〇持ち前の明るさで成長著しい1年生には、中学校生活に慣れてきた今だからこそ返事、挨拶、宿題を意識し、一人一人が確実に実践していくこと。先輩達と先生の、期待を込めた視線がいつも注がれていることを忘れない。
ということを話しました。そのためには、親や家族、友達、先生や先輩、地域の方の話をしっかり「聴く」ことが大切!
①「耳」で聴く 誰のために言ってくれている言葉!? 聴こうという意識を持つ。
②「目」で聴く 相手の表情を見る。空気を感じる。聴く意志を示す。
③「心」で聴く 相手の意図や思いを知る。自分と照らし合わせる。
「耳」と「目」と「心」で聴く姿勢は、人間を成長させます。その習慣は、人生を豊かにします。聴くことで、よりよい自分を描くことができます。聴いた内容をヒントに自分の未来をより具体的に押し広げることができます。聞き逃すのは、損です。独りよがりでは、何も向上できません。世の中に出たら、それが嫌というほど分かります。
親と子、先生と生徒、友だち同士、地域の人と地域の子供が、相互に「言葉をかけたい」「言葉を聴きたい」と思い合える関係づくりが最も重要。 心を紡ぎ合っていきましょう。
※台風の被害はありませんでしたか?
台風10号接近により、8月29日と30日は臨時休校としました。牛深のすぐ東海上を通過したノロノロ台風は、九州をはじめ日本の広範囲に記録的大雨を降らせました。また、暴風・竜巻により西日本の広範囲で停電が続きました。
今後も台風接近が予想されます。教科書・制服等が泥や水に浸かったなどの被害があれば、すぐに学校にご連絡ください。すぐに対応したいと思います。
危険予測、防災準備をしっかりしていきましょう。学校でも指導していきます。
おかげさま
私には、百歳の天寿を全うした祖母がいました。若くして連れ合い(祖父)を病気でなくし、女手一つで子ども二人(母と叔父)を育て上げた肝っ玉ばあちゃんです。母も叔父も、写真の父親(祖父)しか知らないと言っていました。
教師だった祖母の影響を受けて、私も同じ道を選びました。
ばあちゃん子だった私は、祖母の布団に潜り込んで聞く「昔話」を楽しみにしていました。愉快な話、訓話、不思議な話、怖~い話などいろんな話をしてくれるのですが、どんな話も最後は決まって「神様、仏様、世間様のお陰さまで」で締めくくります。
「おかげさま」 上所(かみどころ)重助
夏が来ると 冬がいいという
冬になると 夏がいいという
ふとると やせたいという
やせると ふとりたいという
忙しいと 閑(ひま)になりたいといい
閑になると 忙しいほうがいいという
自分の都合のいい人は よい人だとほめ
自分に都合が悪くなると 悪い人だと貶(けな)す
借りた傘も 雨が上がれば邪魔になる
世帯を持てば 親さえも邪魔になる
衣食住は昔に比べりゃ天国だが
上を見て不平不満に明け暮れ
隣を眺めて愚痴ばかり
どうして自分を見つめないのか
静かに自分を見るがよい
一体 自分とは何なのか
親のおかげ 先生のおかげ
世間様のおかげの塊(かたまり)が自分ではないか
つまらぬ自我妄執を捨てて 得手勝手を慎んだら
世の中きっと明るくなるだろう
おれが おれが を捨てて
おかげで おかげで と暮らしたい
※一部省略
大切にしている詩です。 「お陰さまで」という祖母の口癖と重なります。
スイカを切っても、いつも切れ端しか手に取らない祖母でした。熊本の病院に見舞いに行っても、すぐに「はよ帰らんな」と帰りの道中を心配する祖母でした。
思い通りにならないのが世の中。身勝手は人の常。十人十色、いろんな考えの人がいて、いろんな価値観が混在しているのも当然のこと。
周囲に対しての不平不満を口にするよりも、「お陰さまで」と感謝しながら日々を生きる方が、自分の心も楽になるし、周囲にも迷惑がかからない。
祖母の昔話と同じように、この詩もそんなことを告げているのかも知れません。