平成30年度 学校経営の基本方針

 

1 2年間の研究実戦の成果と課題

(1)成果
 2年間の研究実践により、校種間連携は大きく進み、生徒の自尊感情の涵養、学習意欲の向上、社会性の育成など、社会的自立に向けての基礎基本を身につける教育環境が整ってきた。私たちが研究を進めるにあたって、まず取り組んだことは、様々なことを「そろえる」ことであった。特に、「めざす子ども像」の作成、「鹿北版学習過程スタンダード」の実践、「鹿北版UD化チェックリスト」の活用、「鹿北中学校区保小中連携カリキュラム」のリニューアル、「学びの姿」の統一などに力を入れてきた。小中学校で様々なことをそろえ、ベクトルを合わせられたことは、児童・生徒の成長にとって大きな成果をもたらすこととなった。

 地域との連携・交流・貢献という観点では、コミュニティースクールへの移行に伴い、鹿北小中学校合同学校運営協議会を定期的に開催することができた。また、地域学校協働活動の充実を図ることもできた。ナイトハイク、かほくまつり、町の駅伝大会などの行事に生徒が主体的にかかわるとともに、中学生が「かほくまつり」サポーターとなり、まつりの企画段階から参加し、1つの企画を責任を持って担い大成功を収めることできたことは特筆に値する。地域から感謝状もいただき、生徒の自尊感情、自己有用感の高まりにつなげられたことは大きな成果である。
 自治力育成となかまづくりの観点では、小学1年生から中学3年生までの縦割り班を9グループ作り、交流給食や交流タイム、保小中なかよし駅伝大会などで活用した。小中学校の班長会やグループ毎の駅伝練習などをリーダー育成の機会とし、部活動キャプテン会の開催、キャプテン会主催による部活動集会、そして生徒会活動の活性化に取り組むことで、自治力育成につなげることができた。 
 体力向上については、昨年10月より、小中学校合同トレーニングを開始し、耐性強化や場に応じた礼儀態度を身につけることに取り組んできた。地域及び小学校と連携した部活動(野球、ハンドボール、弓道)を充実させることで、小さい学校でも勝負できるとの自信が芽生え始め、それが、学校生活全般に活気をもたらしている。
 本校の教育の土台となる支援教育では、保小中による情報共有と早期対応を目的とした「すまいる連絡会」、鹿北版UD化チェックリストの活用、子ども支援シートを活用した短時間のケース会議など、鹿北ならではの取組が軌道に乗り始めた。このことが、生徒へのきめ細かな対応へと結びついている。昨年度開設したサポート教室では、英語の個別学習が始まった。生徒の「わかった」という声が聞かれ、わかる喜びが意欲へとつながっている。サポート教室の開設は、通常学級と支援学級をつなぐ役割と共に、生徒、保護者の支援教育に対する理解と啓発にも効果を上げている。

 

(2) 課題

 昨年度、小学6年生では様々なトラブルの発生が相次ぎ、授業が成立しない状態となった。集団としての規律や思いやりの心など多くの課題が明らかになってきた。このことは図らずも、小学1年生から4年生までの教育の重要性について私たちに再認識させてくれた。この期間に学習習慣,生活習慣,挨拶や礼儀,態度などの基本的な習慣,なかまづくり,人権感覚,思いやりなどの社会性を徹底して身につけさせることが,自我が目覚め始める小学5・6年生の生活や自治的な活動に大きな影響を与えること。さらに,小学5・6年生の集団の質や意欲の高まりなどが,中学1年生のスタートレベルを大きく左右することなど,今まで校種を越えて意識することがなかった成長過程に目を向けることとなった。「6・3制」という枠組みにとらわれず,9年間という枠組みの中で子どもたちの成長を考え,教育を創っていくことの重要性を知ることとなった。

 

2 平成30年度の経営方針

1) 研究の継続
 今まで研究を重ねてきたことを継続して取り組んでいきたいと考えている。特に、インクルーシブ教育システムを土台とした、学力向上、体力向上に取り組んで行く。学力向上では、鹿北版学習過程スタンダードのスキルアップにより、主体的・対話的で深い学びの実現、個別支援の充実や個に応じた効果的な家庭学習の確立を図っていきたい。インクルーシブ教育システムを土台とすることで、誰もが授業に参加でき、一人一人が認め合える支持的風土づくりにも力を入れていきたい。
 体力向上では、小学校・地域と連携した部活動のあり方や、中学校で行っている克己タイム、鹿北ギネス、鹿北カップなどの活動に小学生も参加し、小中学校が一体となった体力作りに取り組みたいと考えている。

 

(2) 9年間の連続した学びの整備

 2年間の研究を通して、9年間という期間で教育を考え、子どもたちを育てていく意識が広がりつつある。この流れをさらに加速させるためには、「6・3制」によって学びの連続性を捉えるのではなく、「4・3・2制」の視点で捉えていくことが大切となる。児童生徒の発達のスピードは速くなってきており、小学校4年生と5年生との間には見えない段差があると言われている。そのことを踏まえて「4・3・2制」による教育課程を1年間かけて作成し、平成31年度から実施できるよう整備していく。

 

(3)社会の接点での学びの充実
 縦(保小中)と横(地域)の連携強化による、社会の接点での学びの充実を図っていく。中学校という少人数の人間関係から抜け出し、年齢、男女を問わず様々な生き方や考え方をもった人たちとの交流による「多様な学び」を創造していく。そのための中心となるのが地域学校協働活動である。鹿北市民センター職員の方に地域学校協働活動推進員になっていただくことで、小中学校と地域のさらなる交流、連携推進を図っていきたい。これらの活動を通して社会性の育成に取り組んでいく。

 

(4) 特別活動の推進
 今年度の新たな取り組みとして、なかまづくり、話し合い活動を中心とした特別活動に力を入れていきたいと考えている。自分の思いを他者に伝えたり、他者の思いを推し量る力をつけることに課題があることは、生徒も教職員も周知のところである。生徒会年間テーマにもこのことは色濃く反映されている。9年間同じクラスで生活しているにもかかわらず、友だちのことを知っているようで知らない生徒が多い。思いを交流させる機会を意図的に増やすこと、学級や部活動集団でのなかまづくりを活発に進めていくことは、鹿北の子どもたちの社会的自立にとって不可欠なことである。


(5) 生き方の基礎基本
 昨年度、本校の生徒会活動は内外から大きな注目を浴びた。しあわせ運べるようにの歌と手話による「復興プロジェクト」、かほくまつりでの「手をつなごうプロジェクト」など新たな伝統となる取組にチャレンジしてきたからだ。そして、生徒は、真剣にチャレンジし困難を乗り越え、最後までやり遂げたあとにのみ感じることができる「本当の感動」、「本当の充実感」を味わうことができた。この「本当の感動」を手に入れることこそが「生き方の基礎基本」であると考えている。今年度、生徒会活動や部活動を通して、「本当の感動」「本当の充実感」を手に入れることができる教育活動を生徒と共に創っていきたい。「本当の感動」を味わった生徒は、中学校卒業後の人生でも何かにチャレンジすること、最後までやり遂げることができる人に育っていくと確信している。


(6) 職員の意識改革
 「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ」との言葉は私たちにもあてはまる。職員室にいるよりも生徒のもとへ行く教職員でありたい。部活動指導にはフルタイムでつくことが大切である。そのための二人体制である。

 働き方改革に取り組み、人としての幅を広げる時間を創り出せる教職員でありたい。このことはめぐりめぐって教育の充実につながっていく。感性を豊かにし、生徒のちょっとした変化に気づく教職員でありたい。また、日々、自分のすぐ横を声をかけてほしい生徒が通り過ぎている。それを見逃さない教職員でありたい。私たちの教育の成果は、目の前の生徒の姿がすべてである。けっして言い訳をせず、生徒の成長に責任が持てる教職員でありたい。何よりも生徒があこがれる魅力ある生き方ができる一人一人でありたい。私たちの言語環境を整えていくことは何より大切である。「木は光を浴びて育つ。人は言葉を浴びて育つ」、この言葉を肝に銘じていきたい。