令和3年度 学校経営の基本方針

1 鹿北中の教育の方向性

私たちは、鹿北小・中学校9年間の学びを通して、「すべての子どもが、社会に出て自立して生きていく力を身につけることができる」、そんな教育活動の確立を目指して、今まで様々な実践を創ってきました。

その中で昨年度は、特に次の5つを重点実践項目として掲げ、焦点化を図ってきました。

 

(1)鹿北中学校は、「生き方の基礎基本」を学ぶ学校

「壁(限界)の向こう側は楽しかった」、「きついけど楽しい」、「学校に来ると元気が出る。やる気が出る」といった卒業生が創ってきた鹿北中学校の空気。この空気感こそが、鹿北中の強みです。 

鹿北中生は、常に目標を持ち、その目標達成に向けてチャレンジする中でしか感じることができない、本当の達成感や充実感といった「生きる喜び」を体感しています。

 中学時代に、本当の達成感や充実感を味わった生徒は、大人になっても何かにチャレンジすることができる人に成長していくことができます。

 

(2)鹿北中学校は、「出会いを大切にする」学校

令和元年度から始まった宮古島交流は、出会いの大切さ、すばらしさを教えてくれまし

た。なかまとの交流や人との出会いは、時に面倒でありわずらわしいものです。しかし、宮古島市立結の橋学園の生徒との交流により、「人との出会いは心地よいものなんだ」と実感することができました。

こんな出会いを経験した生徒は、ドキドキしながらも、出会いの心地よさを体感しているので、出会いを大切にできる人に成長していくことができます。

 保育園児や小学生、地域の方々との出会いの中にも、たくさんの学びや刺激があります。そんな出会いの醍醐味をたくさん味わえる学校が鹿北中学校です。

 

(3)鹿北中学校は、「地域を元気にする」学校

鹿北小・中学校は、9年間の学びを、「63制」から「432制」へと再構築しました。そして、3期となる中学2・3年生では、今までの学びの集大成として、地域の方々と共に、地域活性化に取り組んできました。

令和2年度は、「かほくまちサポーター会議」を、「かほく未来会議」へと発展させ、地域の方々と協議を重ね、地域を元気にする活動を創ってきました。「かほくふれあいデー」はコロナ禍においても、まさにピンチをチャンスに変える象徴的な取組となりました。

これらの活動を通して、地域や社会と積極的に関わる人材を育てるとともに、持続可能な社会の担い手の育成に取り組んでいます。

 

(4)鹿北中学校は、「自立した学習者」を育てる学校

令和2年度より、定期テストを廃止し、プレ単元テスト及び単元テストを通して、学力の定着を図る取組を開始しました。定期テストのように、瞬間最高学力を重視するのではなく、学力の定着を重視し、未定着や間違った問題を再度学習し、定着率を自ら上げていくことができる「自立した学習者」を育てていきます。

また、少しでも多くの知識を獲得して、それらをどれだけ解答用紙にアウトプットできるかという学力観からの脱却を目指しています。

 昨年度、一人一台タブレットが活用できるという環境が整い、自分の学びを自分自身で調整したり、課題解決のために何が必要かを自らが考え、判断・選択して学んでいく、「個別最適化」した学びの構築に取り組み始めました。

 私たち自身が、「教える」から「学び」への意識変革と行動変容を日々模索しています。

 

(5)鹿北中学校は、「一人一人の個性が輝く」学校

鹿北中学校は、生徒数が少ない分、一人一人の存在感が大きい学校です。その分、個性を発揮しやすいという利点があります。個性とは、長所も短所も含めて個性と捉えています。しかし、生徒の中には、往々にして自分の短所ばかりに目を向け、自信が持てず、自尊感情が育っていない生徒もいます。

自分を見つめ、長所も短所も受け入れながら、自分の強みを生かすことができる生徒の育成に取り組んでいきます。

中学校時代、自分の長所を生かす経験を積んだ生徒は、社会に出てからも自己実現を図ることができる人へと成長していくことができます。

 

 2 令和3年度、鹿北中のコンセプト

「間違ってもいい学校 失敗してもいい学校」

 

(1)見えてきた課題

 社会の構造的変化から、みんながある程度同じことができることに意味がある時代から、「他人と違う」ことに意味や価値がある時代へと大きく変わってきました。それにも関わらず、中学生を取り巻く環境には強烈な「同調圧力」があるように思います。

 だからこそ、それらを乗り越えて、「自分と他者は違う」ということを受け止められる力を、一人ひとりの生徒が身につけていくことが大切となります。

 しかし、自分の思いや考えを伝えようとする時、「間違ったらどうしよう」、「こんなこと言ったら何と思われるだろう」と考えて、思いや考えを伝えるのをやめてしまうことがあります。そして、「みんなの意見」に自分を合わせてしまうことがあります。

 ゼロから1を生み出そうとする時、目標達成に向けてチャレンジしている時、今までの自分の殻を破ろうとしている時・・・、そんな時は、必ずと言っていいほど「失敗」がつきものです。失敗することが当たり前であるにも関わらず、鹿北中では時々、失敗することや間違えることを過度に恐れてしまい、消極的になったり、チャレンジするのを躊躇してしまう場面を見かけることがあります。

 

(2)課題解決に向けて

 このような状況を打破るため、今年度、「間違ってもいい学校」、「失敗してもいい学校」づくりを目指していきます。

 目的地や正解にたどり着くまでには、いくつもの間違いや失敗があり、試行錯誤しながら、前に進んでいく。これは当たり前のことです。だから、途中の間違いや失敗には大きな意味があり、それは「ステキな失敗」なんだということをみんなで共有していきます。

 「自分の思いを伝えることが当たり前」、あるいは、「思いや考えはみんな様々で、間違いなんてないんだ」という考え方へと意識を転換します。

 令和3年の鹿北中は、「失敗することや間違えるのが当たり前」、あるいは、「失敗しないことが、最大の失敗なんだ」、さらには、「自分の思いや考えを伝えることは、当たり前なんだ」という方向へと大きく転換していきます。

 生徒会も、「自分たちが鹿北中を変えていく」と決意し、話し合いを重ね、次のような目標と合言葉を創り、すでに1月より活動を始めています。

 

(3)こんな学校を

 生徒同士が、対等な関係の中で違いを認め合っていく、そんな多様性が尊重される共生社会を学校の中に築いていきます。

 授業中など、困ったときに「助けて」と伝えられる力や、伝えられる雰囲気を醸成します。また、生徒が「わからない」と言える学校を創ります。

 生徒を「育てる」学校から、生徒が「育つ」学校へと転換していきます。

 障害や特性のある生徒の自立と共に、周りの生徒を育てていくことにも徹底して力を注ぎます。

 障害や特性を長所に変えていくための、個別最適な学びを試行錯誤しながら創造していきます。

 子どもが社会的に自立し、当事者意識を持って多様な意見や価値観の中で合意形成に粘り強く取り組む力をつけるために、「正解主義」や「同調圧力」を乗り越えていきます。

 

(4)こんな教師に

 教員に求められる資質・能力は、「わかりやすく教えること」であることは間違いないことですが、生徒をケアーし、やる気に火をつけるファシリテーターやコーディネーターといった役割が大きくなってきていることに対応できる一人ひとりでありたい。

 「平凡な教師は言って聞かせる。よい教師は説明する。優秀な教師はやってみせる。しかし、最高の教師は子どもの心に火をつける」と言われる通りです。

 子どもたちの頑張りがわかる、喜びや悩みを共有し、責任転嫁しない、けっしてあきらめない。そして、一人一人が魅力ある生き方ができる教職員でありたい。

 「木は光を浴びて育つ。人は言葉を浴びて育つ」と言われるように、私たちの言語環境を整えていくことは何より大切となります。