頼まれごとについて考える
以前、私が生徒会の担当をしていた頃の話です。
その日、私は全校集会の準備をしていました。
準備が直前でバタバタしていたのですが、1本のマイクの音が入りません。
どうやら、電池が切れているようです。
事務室に電池を取りに行きましたが、あいにく合う大きさの電池がなく、事務室の先生も不在でした。
困った私は、一緒にいた後輩の先生に頼みました。
「近くのセブンイレブンで、合う電池を買ってきて。急いでね」
ハイ、わかりました、と後輩は走っていきました。
しばらくすると後輩は息を切らして帰ってきました。
そしてこう言いました。
「すみません。セブンでは電池は売り切れでした」
それだけで、後輩は手ぶらでした。
私は少し残念でした。
100mほど先には、もう一軒コンビニがあるのにな、見に行ってくれるとありがたかったな、
と思いました。
まあ、準備が遅かった私が悪いのですから。
その日の全校集会は、1本マイクが足りませんでしたが、なんとかカバーして進めました。
実業家の前刀禎明さんが、少し似たようなことをおっしゃっていました。
細かい部分は忘れましたが、ある日、新入社員に20ページほどの会議資料を40人分コピーするように指示したそうです。
するとその新入社員は、1ページ目を40枚、2ページ目を40枚と、ソートすることなしにコピーしてきました。
これでは、1人分ずつページ順に並べ替えなくてはなりません。
前刀さんは、「コピー機の使い方をよく知らなかったのかな」と思い、なぜソートしなかったのか尋ねました。
すると、その新入社員は、キョトンとしてこう答えたそうです。
「だって、ソートするようには言われなかったので」
今から40人で行う会議に必要な資料だとわかるはずなのに、と前刀さんはがっかりしたそうです。
ほかのときに、また前刀さんは別の新入社員に、やはり20ページほどの会議資料を40人分コピーするように指示しました。
頼んだ後に、「あっ、ソートしなさいと言わなかったな」と思ったそうですが、間に合いません。
すると、今度の新入社員は、ソートしてそろえた資料を手にやってきて、
「綴じるのは左上1か所でいいですか」と聞いてきたそうです。
この後、どちらの新入社員さんに大事な仕事を頼むようになったか、おわかりかと思います。
講演をよくされている中村文昭さんという方は、
「頼まれごとは、試されごと。
人からものを頼まれたら、試されていると思って相手の予想を上回るように努力する」
と言われています。
ちょっと自分の頭で相手の意図やニーズ、気持ちを考えて行動できる人は、いいなあと思います。