大事なのは「読む」力
江川紹子さんのこの記事を読みました。
大事なのは「読む」力だ! ~4万人の読解力テストで判明した問題を新井紀子・国立情報学研究所教授に聞く~
以下、要点をまとめますと、
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新井紀子・国立情報学研究所教授は、
人工知能(AI)でロボットが東大に入学できるか、
という「東ロボくん」プロジェクトで知られる数学者だ。
今後、AIに多くの仕事が取って代わられることが予想されるが、
そういう社会にあって人が活躍の場を確保し、
より幸せに生きられるためのスキルとして、「読解力」に注目。
全国の学校、さらには社会人も含めて、
文章などの意味をどの程度正確に読めているのかを見る
リーディング・スキル・テスト(RST)を行ってきた。
すでに受験した人は4万人を超えた、という。
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このテスト(RST)では、
(1)主語・述語や修飾語など文の係り受けを理解する
(2)「それ」「これ」などの指示語が何を示すか見つける
(3)2つの文が同じ意味を表すかどうか見分ける
(4)体験や常識、その他の様々な知識を使って文章の意味を理解する
(5)文章と図形やグラフを比べる
(6)文章を読んで、それと合う具体例を認識する
等の力を見るそうです。
なんだ、簡単そうだなと思われるかも知れませんが、
ここでは、一つだけ例題を見てみましょう。
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〈例題〉
Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。
この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまるもっとも適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。
Alexandraの愛称は( )である。
① Alex ② Alexander ③ 男性 ④ 女性
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さて、いかがでしょう。
ちょっと考えてみてください。
「チラ見」とか「二度見」とかがありますが、
「二度見」しないと勘違いしそうな文ですね。
言うなれば、意味の伝わりにくい上手じゃない文なのです。
しかし、この問題は、上記の
「(1)主語・述語や修飾語など文の係り受けを理解する」ことができているか調べる、端的な問題になっています。
正解は最後にお示ししますが、正答率は
中1 23.5% 中2 30.6% 中3 51.4% 全国中学生計235名 37.9%
高1 64.9% 高2 68.0% 高3 57.1% 全国高校生計432名 64.6%
だったそうです。
短い文ですが、中1では4人に1人しか正しく理解できていませんね。
新井さんはこう言われています。
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教科書が読めてない子がたくさんいる、ということです。
文章を読んでいるようで、実はちゃんと読んでいない。
キーワードをポンポンポンと拾っているんです。
○○と○○と○○という言葉が出てきたら、こんなもんだろう、というような。
『……のうち』とか『……の時』『……以外』といった機能語が正確に読めていない。
実は、それはAIの読み方に近いんです。
「数学の問題は、『……のうち』とか『……以外』『……と接する』などという言葉をちゃんと読まないと解けなかったりします」
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「二度見」してでみ、きちんと理解しなくてはいけないところを、
ざーっと「チラ見」しただけで、次へ行ってしまうので、
正しい理解ができていないということでしょうか。
ちなみに、
さっきの例題の正答は、①Alex です。
たんなる「注意力」などの問題ではなく、
「読む」力は、私自身も、指導に当たっても、
大事な問題を含んでいると思いました。
写真は中学最後のテストを頑張る3年生たちです。