桑田佳祐X芥川龍之介
本校の朝の放送は、文化発表会以降、ずっとMICAさんの「繋がってる」「天海」です。
今週は給食の時間には、「クリスマス・ソング特集」が放送されています。
文化放送委員会が潤いのある学校生活のために、工夫して活動してくれています。
先日、あるテレビ番組で、クリスマス・ソングのベストなんとかというものをやっていました。
年代別にアンケート結果が発表されていました。
私は山下達郎さんや松任谷由実さん、頑張ってマライヤ・キャリーさんの有名な曲は知っていましたが、
若い世代の上位に入っている曲は、知らないものが多かったです。
その中で、私の好きな曲が入賞?していました。
桑田佳祐さんの「白い恋人達」という曲です。
この曲を聴くと、同じく好きな芥川龍之介の「ピアノ」という短編小説を思い出します。
このような書き出しで始まる小説です。
(青空文庫をもとに、旧字体や旧仮名遣いを私が現代仮名遣い等に直しています。「震災」とあるのは、関東大震災です。)
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ピアノ 芥川龍之介
ある雨のふる秋の日、わたしはある人を訪ねるために横浜の山手を歩いて行った。この辺の荒廃は震災当時とほとんど変っていなかった。もし少しでも変っているとすれば、それは一面にスレートの屋根やレンガの壁の落ち重なった中にアカザの伸びているだけだった。
(参考:スレートの屋根)
(参考:アカザ)
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いいですね。
芥川を好きな人だったら、たまらないような芥川ワールドです。
この横浜の荒んだ街角は、きっと主人公イコール芥川の人生の何かを表していますね。
そして、物語はこう続きます。
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現にある家の崩れた跡にはフタをあけた弓なりのピアノさえ、半ば壁にひしがれたまま、つややかに鍵盤を濡らしていた。のみならず大小さまざまの譜本もかすかに色づいたアカザの中に桃色、水色、薄黄色などの横文字の表紙を濡らしていた。
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お分かりですね。
この家の崩れた跡に置き去りにされたピアノは、主人公イコール芥川自身かもしれませんね。
きっとアカザも何かを表していますね。
アカザの枝は強く、杖の材料にもなるそうですので、おそらく「 」を暗示しているのでしょう。
(「 」の中はご想像ください)
そして、途中は略しますが、この後の場面では、ピアノがこう描かれています。
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すると突然聞えたのは誰かのピアノを打った音だった。いや、「打った」と言うよりもむしろ触った音だった。わたしは思わず足をゆるめ、荒涼としたあたりを眺めまわした。ピアノはちょうど月の光に細長い鍵盤をほのめかせていた、あのアカザの中にあるピアノは。――しかし人かげはどこにもなかつた。
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この不思議なピアノの音を巡って、さらにストーリーは続きます。
興味がある方は、読んでみてください。
なぜこの芥川龍之介の短編小説と桑田佳祐さんの曲が重なるかというと、このMVがあるからです。
「ピアノ」を最後まで読んでいただき、このMVをご覧いただくと、
私の言っている意味がお分かりいただけるかと思います。
クリスマスを前に、この動画をもう一度見直したところです。
生徒の皆さんも今年の冬休みは少し外出を控えて、
静かに音楽を聴いたり、本を読んだりしてみてはどうでしょう。