菅さん式人生相談の練習(後編)
新聞の「人生相談」の「答え」の方を隠して「相談者」の相談内容の方だけを読み、
「自分ならどう答えるだろう」と考えるという、
菅官房長官の「人生相談の練習」の実践・後編です。
どんな相談かは、昨日のこの欄をご覧ください。
「片時もスマホを手放さない高校生の娘」という相談内容でした。
皆さんなら、どう答えられますか?
まず、私の考えてみた回答です。
家庭内でルールを作っても効果がないのであれば、実力行使?も辞さずではどうでしょう。
充電器はお茶の間に固定して、22時以降はスマホをそこに置くようにするとかはどうでしょう。
「親のお金で買ったスマホを、あなたに使わせてあげてるのだからね」
「電気もWi-Fiも親の働いたお金で使ってるのよね」とか。
(ちょっとギスギスしますでしょうか)
あるいは、スマホの使いすぎが眼や脳に悪い影響を与える、医学的根拠を示して、
子供部屋の壁に張るというのはどうでしょう。
(これもちょっとどうかな感がありますか)
幼児の視力低下が心配!テレビやスマホ、タブレットを長時間見ると近視になる? ベネッセ教育情報サイト
では、この記事の回答者、玉置さんの回答です。
【玉置妙憂の心に寄りそう人生相談】片時もスマホを手放さない高校生の娘
***** 以下引用 *****
うーん……四六時中スマホ。母としてご心配のあまり奥さまがイライラするお気持ち、察するに余りあります。
そして、間に立ってなんとかみんなが幸せになれる効果的な方法はないかとお考えになっているあなたさまのご心労、いかばかりか。
我が家にも娘さんと同じ年ごろの愚息がおりますが、やっぱり息をするように一日中スマホをいじっています。
ただ、それは、時代が完全に変わったからだと私は思うのです。
あなたさまも電車に乗ったときご覧になったことがあるでしょう。
箱の中の9割の人間がスマホを見ています。
良い悪いではなく、そういう時代になったのです。
ひと世代前の私たちとしては、なかなかその変化に対応できない。
朝から晩までスマホをいじっていることを真っ向から否定したくなります。
なぜなら、自分の中にその文化が無いから。
そこには、事の良し悪しの公平な判断ではなく、やみくもに自分の持っている文化を相手に押し付けようとしているところがないでしょうか。
当然のことながら、共通の基盤を持たない者がつくった「ルール」というのは、得てして守られないものです。
まずは、お嬢さんが身を置いている時代の波に私たちも乗ってみませんか。「すごいね。面白そうだね。何をやっているのか教えてよ」と。
そうして、あなたの文化を認めているよ、共有したいと思っているんだということを伝えます。
次に、「あなたはスマホばっかりいじって!」という言葉を「私は一日中スマホをいじっているあなたが心配なの」と言い換えて、お話をしてみてください。
ポイントは「あなたは」を「私は」にすることです。「あなたは!」は相手に防御態勢をとらせてしまいます。まずは「私は」で壁を壊してこちらの思いが相手に届くようにしましょう。
そして、ぜひ娘さんに、電源さえ落とせばあなたが見ている世界からいつでも離れることができると、脱出ルートを教えてあげておいてください。
*****
いかがでしょうか。
さすがに説得力のある回答だと思いました。
私はまず、
「当然のことながら、共通の基盤を持たない者がつくった「ルール」というのは、得てして守られないものです」
というところがなるほどと思いました。
自分のことを理解してくれている人の言葉しか、人の心には入っていかないかもしれないからです。
そもそも、この玉置さんの回答自体が、相談者の方の気持ちに共感して優しい語り口ですね。
あなただけではなくて、うちもそうです、と言われると、
相談者もそれだけで少しホッとするかもしれません。
そして、その方針で子どもの立場や認識を共有して、
その後、「あなたは」を「私は」にしていわゆる「I メッセージ」で、
押し付けがましくならないように語りかけるのは、
子ども自身に考える力を育てる意味もあると思いました。
私自身、菅さん式の練習をやってみて、勉強になりました。