ショーシャンクの「空」に
「ショーシャンクの空に」という映画をご存知でしょうか。
1994年のアメリカ映画ですが、私が好きな映画で、DVDも持っています。
何十回も見ている映画の一つです。
この映画の原題は、「The Shawshank Redemption」(ショーシャンクのあがない)。
S・キングの原作は「刑務所のリタ・ヘイワース」です。
リタ・ヘイワースさんは、1940年代に米国で人気を博した俳優さんです。
映画でもポスターとして登場します。
さて、なぜ邦題は「ショーシャンクの空に」なのでしょう。
ショーシャンクとは舞台となる、架空の刑務所ですが、
「空に」とは?
この映画の邦題について国語の授業をするとしたら、
どうするだろうかと、考えてみました。
私の印象に残っているシーンから、
映っている「空」に着目してみました。
①刑務所の屋根の上の空
冤罪でショーシャンクに入ったアンディは、
もともと有能な銀行員でした。
そのアンディが刑務官の節税に協力したおかげで、
仲間が冷たいビールにありつく場面です。
アンディは絶望せず、強みを生かして、
仲間がうまそうにビールを飲むのを、静かに見ています。
アンディのショーシャンクでの生活を方向づける出来事です。
バックに映る空は、曇り空です。
②モーツァルトの流れる空
刑務所内の図書室の担当になったアンディは、
毎日州当局に予算増額の陳情の手紙を出します。
その願いが叶って、予算増額が実現した時に、
アンディは所内放送で勝手にレコードを流します。
(もちろん規則違反です)
「フィガロの結婚 そよ風に寄せる」ですが、
いかつい囚人たちが皆思わず立ち止まって、空を見上げ、聞き入ります。
刑務所に似つかわしくない、
美しいオペラの歌声が、囚人たちの心を打ちます。
この時のショーシャンクの空は少し明るい空です。
アンディの言う「希望」の実現を暗示しているように思います。
③アンディを打つ雨の空
アンディが這いずった下水管から抜け出し、立ち上がると、
稲光の光る中、彼を激しい雨が打ちます。
ただ、この雨は、下水管の中で汚れた彼の身体を洗い流し、
また、他の何かも洗い流しているようです。
実は、この場面では空はよく映ってはいませんが、
雨を全身で浴びるアンディの
視線の先には、稲光の雨空があるでしょう。
④「ショーシャンクの」ではない、空
物語はアンディが自由の身となり、刑務所長の悪事が明るみになったところで、
一件落着のようになりますが、
この映画は、そこから17、8分ほど、
アンディの囚人仲間であるレッドの語る後日談が続きます。
最後に紹介するのは、
「ショーシャンクの」空ではありませんが、
刑務所外でアンディとレッドが再会する、
メキシコのある海辺のラストシーンです。
この場面の青い空と青い海は、素晴らしいです。
この空こそアンディとレッドの残された人生ではないでしょうか。
邦題を考えた人も、このシーンを見て、
「空」にこだわったのではないかと思います。
このように作品のタイトルについて考えてみる、
または別のタイトルを工夫して考えてみるのも、面白いような気がします。