高倉健さんの最敬礼
挨拶の話のつづきです。
(野地秩嘉氏「心に響く言葉」より)
……ドアが開いたら、あの大スターの高倉健がたったひとりでエレベーターに乗っていたんです。
呆然としていたら、私のそばに来て、
「高倉です。よろしくお願いします。」
直角です。90度の角度ですよ。あわてて、私がごにょごにょ言いながら、なんとなく頭を下げたら、高倉さんは不動の姿勢で下を向いていました。
びっくりしました。
「こういう人が本当の大人だ」と感じました。マネージャーも付き人もいなかった。
たったひとりで博多にやってきて、ホテルもひとり。
ロケの間もひとりで立っていました。絶対に腰を下ろさない。
何の文句も言わない。オレたちバイトには気を配って、飲み物とか食べ物をくれる…。
衝撃でしたねえ。世の中には立派な大人がいるんだと思った。………
だって、はたちかそこらの何もわからないガキに対して、最敬礼して、ちゃんと尊重してくれる。
そんな人いないです。
バイト仲間とはあの頃、「大人になったら高倉健みたいになりたい」と話しました。
いつの日か、立派な大人になるんだ、と。……
(しかし、筆者はすぐには人に頭を下げられる人にはなれなかったそうです。自分に自信が持てず、突っ張っていたそうです。しかし、ある日、ふと高倉さんの最敬礼を思い出して、『一からやり直そう』と決め、そこから成長し、人間関係も変わって、仕事が順調に行きだしたそうです。)
……高倉さんにお目にかかることは、もう一生ないでしょう。でもあのお辞儀を見ていなかったら、自分はこうはならなかった。高倉さんのおかげだと思う。
だから、作品はどんなものでも全部見ます。
筆者・野地さんの話はこう結ばれていました。
さて、私は「あいさつ」の「あ」は「あかるく」の「あ」という話を、時折します。。
「い」は「いつでも」の「い」。「さ」は「さきに」の「さ」。
そして、「あいさつ」の「つ」は「つたわる」の「つ」です。
高倉さんの「最敬礼」は、人の生き方にも影響を与えるほどの何かを「伝えた」のですね。
私たちも毎日の挨拶を大切にしたいと思ったところです。