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校長室ブログ 今日の東天

関係ない人が応援したくなるチーム

少しの間、バスケット部の指導をしていた時期がありました。

バスケットの試合を引率すると、自分たちの前の試合か次の試合とかに審判をしなくてはいけませんでした。

惜敗して悔しかった試合の後にすぐに審判をしなくてはいけない時など、

目の前の試合より、さっきの自分のチームの試合のことが思い出されて、

「くそーっ、あの時選手交代しておけばよかった」とか、「あのプレーさえなかったら」とか、考えてしまい、上の空で笛を吹いていたこともありました。

 

ある大会で審判をした時のことです。

どちらのチームも知らないチームで、そんなに上手ではなく、いわば退屈な試合でした。

しかし、試合が進むにつれ、あることに気づきました。

赤いユニフォームのチームは、決して上手ではありませんでしたが、ベンチの選手の声援がいいのです。

一生懸命に応援しているのはもちろん、ミスが出た時は「ドンマイ」と声をかけたり、、シュートが入った時は、手を取り合って喜んだりしています。

一方の白いユニフォームのチームはというと、ベンチは静かでした。

うまくいかない時は「あ〜あ」みたいな感じで、いいプレーがあってもパラパラ拍手があるだけ。

作戦タイムの時、プレーしている選手が空けてもらったベンチに座って、監督さんの指示を聞いたりするのですが、

選手が補欠の生徒に「ポカリを早くくれよ!」みたいなことをイライラして言っている。

監督さんが注意すると「チェッ」みたいな感じで反応していました。

赤チームがみんな顔をくっつけるようにして、監督さんの持つ作戦ボードをのぞきこんでいるのとは、空気感が違いました。

私は審判なので、どちらのチームの肩を持つということはないのですが、

これは、白チームはやりにくい感じだな、負けちゃいそうだな、と少し思っていました。


ゲームが再開してしばらくして、私が吹いたわけではないのですが、ある判定があったとき、

白チームの選手が持っていたボールを近くにいた審判の私に返さず、床に叩きつけました。


私も気が長い方ではないので、心中穏やかではありませんでした。


試合は続き、それなりに接戦を展開していました。

赤チームの選手は審判からボールを手渡される時は、お辞儀をします。


これは、バスケの神様は赤チームに味方するだろうなとか思っていました。


私はいわばどちらのチームにも関係ない部外者ですが、なんとなく赤チームを応援したくなる感じでした。


試合が続き、結局は私の予想に反して、白チームが勝ちました。

ベンチの荷物を片付ける後輩になんか怒りながら、さっさと移動する白チームと、

何人かが泣きながらぐずぐずしている赤チームの選手を見て、

まぁ素早くベンチを空けた方がマナーはいいのですが、

それとは別に、私は

「試合に勝ったの白だけど、本当のバスケの勝者はどっちかな」と考えていました。

「バスケの神様が見ていたら、どちらのチームを褒めたかな」と。

関係ない人が自然と応援したくなるチームとは、素敵なチームなのではないでしょうか。

  

教科書の文章が読めているか

少し前ですが、「教科書の文章、理解できる? 中高生の読解力がピンチ」(朝日新聞デジタル)という記事がありました。

 

思考力とか判断力、表現技能とか言う前に、そもそも教科書の本文の言ってることがわかっているのか、そのレベルの日本語が通じているのか、という問題提起です。

 国立情報学研究所の新井紀子教授さんがこう指摘なさっています。

「基礎的な読解力がないまま大人になれば、運転免許や仕事のための資格を取ることも難しくなる」

そこで、新井さんは教科書や新聞記事などの文章を読んでもらい、意味や構造を理解できているかを調べる「リーディングスキルテスト」を実施されました。

2016年4月から今年7月にかけて、中高生を中心に全国で約2万4千人が受けた。問題は、コンピューターで受験者ごとに無作為に出題したとのことです。

以下にリーディングスキルテストの問題例を引用します。

実際の中学校の教科書の文章を題材にしてありますので、頭の体操として、読んでみられてください。

私は、すきっと頭に入ってこないものがありました。

この欄の最後に、正答と中高生の正答率も載せておきます。

教科書の文章の意味を理解する問題にしては、正答率は想像より低いように思います。

新井さんによると、「仕事の多くが人工知能(AI)に代替される時代が近づくなか、AIに負けない能力を身につけるには文章の意味を理解し、学び続けることが欠かせない」ともおっしゃっています。

日頃の授業でも、よりわかりやすい伝え方を心がけなくてはいけないと職員室で話をしようと思います。

 

【問題例 1】

以下の文を読みなさい。

幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。

上記の文が表す内容と以下の文が表す内容は同じか。「同じである」「異なる」のうちから答えなさい。

1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。

出典:東京書籍「新しい社会 歴史」

 

【問題例 2】

以下の文を読みなさい。

Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。

この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。

Alexandraの愛称は( )である。

①Alex

②Alexander

③男性

④女性

出典:開隆堂出版「Sunshine3」


【問題例 3】

以下の文を読みなさい。

仏教は東南アジア、東アジアに、キリスト教はヨーロッパ、南北アメリカ、オセアニアに、イスラム教は北アフリカ、西アジア、中央アジア、東南アジアにおもに広がっている。

この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。

オセアニアに広がっているのは( )である。

①ヒンドゥー教

②キリスト教

③イスラム教

④仏教

出典:東京書籍「新しい社会 地理」

 

【問題例 1】正答:異なる  正答率:中学生57%、高校生71%

【問題例 2】正答:①  正答率:中学生38%、高校生65%

【問題例 3】正答:②  正答率:中学生62%、高校生72%

5人の平均

アメリカのジム・ローンという人は、示唆に富んだ言葉をいくつも残しているようです。

 

「成功とは、普通のことを、並外れて上手くやることである」

など、イチロー選手が言いそうな言葉です。

 

「人生は必要より行動に応える。米にしても『必要だから収穫がある』のではなく、『種をまいたから収穫がある』のだ。『収穫が必要』なら、まず種をまかなければならない」

言い換えると、

「医者になる必要があるから医者になるのではなく、医者になるための努力をしたから医者になる」

ということではないでしょうか。

他の人の言葉で

「才能は行動をもって価値を生む」

という言葉も読んだ覚えがあります。

 

ローンさんの言葉に戻りますが、私が気になった言葉は

 

「あなたというのは、もっとも多くの時間を共に過ごすその5人の平均である」

という言葉です。

 

「類は友を呼ぶ」

「朱に交われば赤くなる」

などとよく言われますが、

「5人の平均」と言われると、ちょっとドキッとしませんか。

生徒の皆さんも、あなたの周りの5人をよく見てください。

 気の合う友達もいいですが、お互いに高め合う友達も必要でしょう。

 

ローンさんは、こんなことも言っていました。

「運命を一夜で変えることはできないが、あなたが進む方向を変えることは一夜でできる」

生活の方針を改めるのに遅すぎるということはないでしょう。

(これは6人組。そのうちの1人は他の5人の平均)



形容詞の人、動詞の人、擬音語・擬態語の人

「形容詞の人か、動詞の人か」という朝日新聞の論評を読んだことがあります。


「……亡くなった中曽根康弘元首相が、新党さきがけの代表幹事だったころの鳩山由紀夫元首相を『ソフトクリーム』にたとえたことがあった。

とかく甘めな言辞に対して『政治は、美しいとかキラリと光るとか、形容詞でやるのではなく、動詞でやるものだ』と注文をつけた。……」

なるほど、政治は口先の美辞麗句ではなく、行動が大切なのは、わかる気がします。

 また、文章はこう続いていました。

 「……小説というのは形容詞から腐ってくる、と言っていたのは作家の開高健だった。……」

「……政治においても形容詞(修飾語)は腐りやすいものだ。

とりわけ今の政権にはそれが目立つ。丁寧に、真摯(しんし)に、謙虚に……これらはどれも朽ち果てて、もはや言葉としての実体はなくしている。……」

 

「丁寧に、真摯に、謙虚に」

まぁ使い古されていますね。

私も形容詞や副詞の修飾語だけではなく、動詞を大切にしたいです。

学校現場では一般的に、「実践(行動)こそ大事にしよう」ということで、「共通実践」と言います。

ただ、私は擬音語・擬態語はよく使ってしまいます。

「ビシッと、サクサクと、ビューッと」

その後に必ず動詞を付けて話すこととしましょう。

リスを見習う

校長室に新しい机を買っていただきました。

今までの机は引き出しが一つ壊れていて、他の引き出しもスムーズに出し入れできない、歴史ある物でしたが、機能的な机がやってきて喜んでいるところです。

しかし、事務室の面々にもお手伝いいただきながら、机の上や引き出しの中身を引越しする際に、我ながらあきれたのは、その未整理と混乱ぶりでした。

ずっと探していて見つからなかった、お気に入りのボールペンが見つかったり、時間のせいか気温のせいかわかりませんが、数本の蛍光ペンとひっついて取れなくなった消しゴムがあったり、前々々任校で使っていた名札があったり、ホッチキスの針が4箱も5箱も発掘されました。

「きっちり貯めてしっかり整理。リスは集めた木の実を覚えやすいように整理することが判明(米研究)」という記事を読みました。以下、その記事を参考にして書きます。

 

その記事によると

「米カリフォルニア大学バークレー校の研究者は、キャンパス内で暮らしている45匹のリスを2年近く追跡調査した。

その間、ナッツ類(アーモンド、ヘイゼルナッツ、ピーカンナッツ、クルミ)を異なるパターンで与えて、リスがそれをどのように蓄えるのか観察した。

すると抜け目ないリスたちはそれまでと違う場所で餌を発見した場合、それを新しい場所に種類別、ときには大きさ別に隠すことが判明した。」

ということです。

どうも、私よりリスの方がしっかりしているようです。


また、「これは心理学者の言うチャンク化(情報の断片を類似性などの基準でより大きな情報に統合する記憶のプロセス)という技法に似ており、管理や記憶を容易にするやり方だ。」

 「リスは人が日用品を片付けるときと同じようにチャンク化を行なっているのかもしれません。みなさんも果物ならこの棚、野菜ならあの棚といった具合に仕舞いますよね。そうすれば、タマネギが必要なときいちいち台所の棚すべてを探さなくてもいいわけです。」

とも述べられています。

チャンクとは、例えば、たとえば数字の羅列「0120142857」にハイフンを入れて「0120-142857」とするだけで、フリーダイヤルの電話番号だと分かりやすくなるという具合です。

「わかること」は「分かること」、「分かること」は「分けること」とも言われます。

 

また、中3の国語教科書に載っている井上ひさしの「握手」という作品では、死期を悟ったルロイ修道士さんが「私」に、

「仕事がうまくいかないときは、この言葉を思い出してください。

 『困難は分割せよ』

 あせってはなりません。問題を細かく割って、一つ一つ地道に片づけていくのです。

 ルロイのこの言葉を忘れないでください」

と語りかける印象に残る場面が出てきます。

 

分ける、分割するということは、整理し理解することだけではなく、解決するうえでも大切なことなのかもしれません。

 

「握手」はこの本に収録されている短編です。

ナイン